浄土三部経

大乗仏教
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浄土三部経(じょうどさんぶきょう)とは、大乗仏教の経である『仏説無量寿経』、『仏説観無量寿経』、『仏説阿弥陀経』の三経典をあわせた総称である。法然を宗祖とする浄土宗・西山浄土宗親鸞を宗祖とする浄土真宗においては浄土三部経を根本経典としている[1]。ただし時宗は『阿弥陀経』を重んじる[2]

浄土宗西山浄土宗浄土真宗などにおいて、下記の漢訳経典を浄土三部経という。

阿弥陀仏とその本願、またその仏国土浄土)である「極楽」に関する教えなどが説かれている。詳細はそれぞれの項目を参照。

大正新脩大蔵経では、これらは「宝積部・涅槃部」に収録されている。

中国・日本において、浄土思想に言及する註釈書は古くよりたいへん多いが、この三経典を中心に撰述されている。

歴史

これらが「浄土三部経」と称されるようになったのは、法然『選択本願念仏集』(『選択集』)において、以下のように記述したことに由来する。

初正明往生浄土之教者 謂三経一論是也
三経者 一無量寿経 二観無量寿経 三阿弥陀経也
一論者 天親往生論是也 或指此三経号浄土三部経也(中略)
是也今者唯是弥陀三部 故名浄土三部経也 弥陀三部者是浄土正依経也
初めに正しく往生浄土を明かす教というは、いわく三経一論これなり。
「三経」とは、一には『無量寿経』、二には『観無量寿経』、三には『阿弥陀経』なり
「一論」とは、天親の『往生論』(浄土論)これなり。あるいはこの三経を指して浄土三部経と号すなり。(中略)
今はただこれ弥陀の三部なり。故に浄土三部経と名づくなり。弥陀の三部はこれ浄土の正依経なり

三経一論

この「三経一論」の「一論」とは、法然『選択集』において「一論者 天親往生論」とあるように『往生論』をいう[要出典]。『往生論』は略称で、正しくは『無量寿経優婆提舎願生偈』のことである[5]。『浄土論』とも略称される[5]。この論は、天親(世親)によって『無量寿経』を註釈したものとされ、菩提流支により漢訳されたものが現存する。2012年現在、サンスクリット語の原典は散逸しており発見されていない。

宗旨による違い

日本の浄土教諸宗においては、「三部経」のなかでも、それぞれ重視する経典が異なっている。

浄土宗(鎮西派)
『仏説観無量寿経』
西山浄土宗(西山派)
『仏説観無量寿経』
浄土真宗
『仏説無量寿経』
浄土真宗の宗祖とされる親鸞は、主著『顕浄土真実教行証文類』(『教行信証』)の「総序」の結びに、『大無量寿経』・「真実の教」・「浄土真宗[6]」と記している。
時宗
『仏説阿弥陀経』

なお、上記の三宗と同じく称名念仏の宗派として成立した融通念仏宗では、『華厳経』・『法華経』を正依とし、『浄土三部経』を傍依としている。

注・出典

[脚注の使い方]
  1. ^ 浄土三部経(じょうどさんぶきょう)とは - コトバンク
  2. ^ 時宗(じしゅう)とは - コトバンク
  3. ^ a b 浄土宗・浄土真宗所説
  4. ^ 藤田宏達『観無量寿経講究 安居本講』 真宗大谷派宗務所出版部、1985年、P.20-21
  5. ^ a b 中村元ほか(編)『岩波仏教辞典』(第二版)岩波書店、2002年10月、108頁。 
  6. ^ ここでいう「浄土真宗」とは「真の宗教である浄土宗(法然)の教え」の意。宗旨としての意ではない。

参考文献

  • 浄土真宗教学編集所 浄土真宗聖典編纂委員会 編纂『浄土三部経』 現代語版、本願寺出版社〈浄土真宗聖典〉、1996年。ISBN 4-89416-601-1。 
  • 中村 元、早島鏡正紀野一義 訳注『浄土三部経 上』岩波書店岩波文庫 青306-1〉、1990年。ISBN 4-00-333061-7。 
  • 中村 元、早島鏡正・紀野一義 訳注『浄土三部経 下』岩波書店〈岩波文庫 青306-2〉、1990年。ISBN 4-00-333062-5。 

別訳版

関連項目

ウィキソースに『仏説無量寿経』の原文があります。
ウィキソースに『仏説観無量寿経』の原文があります。
ウィキソースに『仏説阿弥陀経』の原文があります。
ウィキソースに『無量寿経優婆提舎願生偈』(『往生論』/『浄土論』)の原文があります。
浄土教 大乗仏教の一派)
地域別仏教
Mahāyāna Buddhism
日本の主な宗旨
如来
菩薩

観世音菩薩 | 大勢至菩薩 | 薬王菩薩 | 薬上菩薩 | 普賢菩薩 | 法自在王菩薩 | 白象王菩薩 | 獅子吼菩薩 | 陀羅尼菩薩 | 虚空蔵菩薩 | 徳蔵菩薩 | 宝蔵菩薩 | 金蔵菩薩 | 金剛菩薩 | 山海恵菩薩 | 光明王菩薩 | 華厳菩薩 | 衆宝王菩薩 | 月光王菩薩 | 日照王菩薩 | 三昧王菩薩 | 定自在王菩薩 | 大自在王菩薩 | 大威徳王菩薩 | 無辺身菩薩

思想・基本教義
仏典

浄土三部経」(『仏説無量寿経』 曹魏康僧鎧訳 / 『仏説観無量寿経』 劉宋畺良耶舎訳 / 『仏説阿弥陀経姚秦鳩摩羅什訳)
『般舟三昧経』 支婁迦讖

関連人物

【インド】釈尊 | 十大弟子 | 龍樹 | 天親
【中国】廬山の慧遠 | 曇鸞 | 道綽 | 善導 | 懐感 | 少康
【日本】空也 | 良源 | 慶滋保胤 | 源信 | 永観 | 良忍 | 珍海 | 覚鑁 | 源空(法然) | 隆寛 | 弁長 | 親鸞 | 証空 | 一遍 | 覚如 | 蓮如 | 良寛 | 小林一茶 | 清沢満之 | 山崎辨榮 | 鈴木大拙 | 曽我量深 | 金子大栄 | (妙好人)

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