フノス

ウィリー・ポガニー(英語版)が1920年に描いたヘイムダルとフノス。このイラストを挿絵としている書籍『北欧神話』(日本語訳。岩波少年文庫、97-99頁)では、フノス(フノッサ)は行方不明となった父オーズ(オーズル)と母フレイヤを再会させられるのが自分であることから、父の帰還を真っ先に見つけられるようにいつもビフレストの側にいた。そしてヘイムダルと一緒にいることを好み、彼から万物がどのようにできたかなどさまざまな話を聞いたとされている。

フノス[1](またはフノッサ[2]。Hnoss[3]、Hnos[4] など)は、北欧神話に登場する愛の女神フレイヤとその夫オーズの間に生まれた娘である[5]古ノルド語でその名前は「[6]」または「宝石[7]」を意味する。

概要

スノッリのエッダ』第一部『ギュルヴィたぶらかし』には、彼女が非常に美しいことから北欧人が美しい人を「フノスのように美しい」と称するという趣旨のことが書かれている[8]。 また、人々が美しい物を「フノシル(Hnossir)」と呼んだともいわれている[9]

ユングリング家のサガ』第10章によると、姉妹はゲルセミとされている。 二人がともに美しかったことから、人々は高価な物をフノスとゲルセミの名に由来して呼んだともいわれている[5]

フノスはアースガルズに住む神々の中で最も若く、町の中のどの御殿を訪れても、喜んで迎え入れられ、自由に遊びに行くことが出来た[10]

ケニング

フノスに関する次のようなケニングの用例がみられる[11]

  • 詩人エイナルによる、フノス→宝の用例
    • ヴァンの花嫁(フレイヤ)のしたたかなる娘
    • ゲヴン(フレイヤ)の娘
  • 詩人エイナルによる、フノス→宝→斧の用例
    • ホルン(フレイヤ)の黄金にて飾られたるめぐし子
    • フレイの姪
    • ニョルズの娘(フレイヤ)の子

ほかに、フレイヤを「フノスの母」と呼ぶ用例がある[12]

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』など多くにみられる表記。
  2. ^ 『北欧神話 (岩波少年文庫)』などにみられる表記。
  3. ^ Northvegr - Heimskringla "Ynglinga Saga" Archived 2006年11月26日, at the Wayback Machine.にみられる綴り。
  4. ^ 『北欧の神話伝説(I)』273頁にみられる綴り。
  5. ^ a b 『ヘイムスクリングラ - 北欧王朝史 - (一)』52頁。
  6. ^ Orchard (1997:87).
  7. ^ 『北欧の神話』125頁。
  8. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』251頁。
  9. ^ 『北欧の神話伝説(I)』273頁。
  10. ^ 『北欧神話』97-98頁。
  11. ^ 『「詩語法」訳注』44-45頁。
  12. ^ 『「詩語法」訳注』29頁。

参考文献

  • スノッリ・ストゥルルソンヘイムスクリングラ - 北欧王朝史 -(一)』谷口幸男訳、プレスポート・北欧文化通信社、2008年、ISBN 978-4-938409-02-9
  • V.G.ネッケル他編『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年、ISBN 978-4-103-13701-6。
  • 谷口幸男「スノリ『エッダ』「詩語法」訳注」『広島大学文学部紀要』第43巻No.特輯号3、1983年。
  • パードリック・コラム(en)『北欧神話』尾崎義訳、岩波書店〈岩波少年文庫〉、2001年、ISBN 978-4-00-114550-2。
  • 松村武雄編『世界神話伝説大系29 北欧の神話伝説(I)』名著普及会、1980年改訂版、ISBN 978-4-89551-279-4。
  • 山室静『北欧の神話 神々と巨人のたたかい』筑摩書房〈世界の神話 8〉、1982年、ISBN 978-4-480-32908-0。
  • Orchard, Andy (1997). Dictionary of Norse Myth and Legend. Cassell. ISBN 0-304-34520-2
神々
英雄
登場人物
アース神族
ヴァン神族
男神
女神
その他
ミョルニルを象ったペンダント スウェーデンのスコーネ、1877年
生物(カテゴリ)
地名(カテゴリ)
九つの世界
その他
神器(カテゴリ)
出来事(カテゴリ:北欧神話)
原典資料(カテゴリ)
社会
その他
  • ポータル:神話伝承
  • カテゴリ